ハウコレライターを初めました

一押記事:笹野高史さんから心温まるメッセージ
 計画停電に関する話として掲載させて頂きましたが、全ての方に届けたい"言葉”です。
特にこの度「地震」で来られた方!
読んでからの退出を!

マン盆栽始めました。只、娘が一足先に・・・
P1120815.JPGタイトル:春の雪遊び

 検索でウッカリ立ち寄られた方も、そうで無い方も、記事の新旧にこだわらず足跡としてコメントでも残して下さいな。
 明日への活力に成りますんでね。

新カテゴリ:その時カエルは地震を予知したのか?
それに際しあわせてこちらの記事も一読頂けると幸いです。
今日のカエル君。連載(?)に於いての注意と心構え


カテゴリ:3/11日東北地方太平洋沖地震・計画停電

2011年03月04日

姫卒園

※この原稿は、リクエストが有ったので掲載に踏み込みました。
 原文のまま(子供の名前だけはチェンジ)で発表させて頂きます。
 一つ断りを入れるならば、私は横書き原則の処を無理体に縦書きで書いており、またそのフォーム、ひな形を変えずに、そのフォームに合わせ読みやすい改行などしており、それがブログに置き換えた事で返って読みにくい事が、予想されます。
 ご勘弁下さいませ。


 書き出しても、書き出しても、否書こうとしても全くもって筆が進まなず難儀して居る。
 正味な話、三年もの時間を持ってして、始まりと終わり、そして現在。特記すべき転化を思い当たれ無いで居るのである。上と下の兄弟はあんなにいなりもりで変わったのに、姫ときたら、また考えてて、頭が傾げた。
 精神的にも肉体的にも、大いに幾多の成長を遂げた事は当然解って居るのではあるが、はてさて、悩んでいても筆が進む気配は無い。
 当の姫に問うてみるが「うーん」一向に、見えてこない。大分待って「友達が居る。」ちょっと会話に成って居なかった気もするが、成る程、友達が出来た事って、当たり前の様で、その実絶大な出来事何だと、思い改めた。
 私等の時代はまだまだ少子化とも言えないギリギリの世代で、物心つく前に近隣に同年の親友、頼れる兄貴、そんな友達が多く居た。それに比べ、昨今は同年代の子供が近所に居るとは限らないし、近所付き合いの敷居も高く感じる。引っ越しも在った。子供が三人も居ると家庭内で自己完結してしまい。当時は仕事も忙しく全く気付いてやれなかった事に反省。心の溝に気付けないダメな親父だ。
 さて、大きく開いてしまった溝は、余所の幼稚園で埋めてあげられただろうか?溝を埋めぬまま、学校と云う世上に送り出せたのか、答えは了然だ。確かに詳しくは知らない。只先生なんて呼ばせない「ちゃん」付けじゃなければ不能なんだと自問する保育士に、そうそう視てなんかもらえない。それも三年間も、卒園に際し端正に謝礼すべきと思うた。
 また、変化が無いその事が、むしろ凄い事なんだと云う真実に気付いた。ありのまま、自然体、為すがまま、そう誠実に「まま」で在る事を大切にしてくれる、園の思想。そう姫にとっては充実し健全な三年間で在った。
 いなりもり入園に、一点の悔い無し。
posted by かわもともとい at 11:04| Comment(2) | TrackBack(0) | 作品紹介(仮置場) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月03日

教育禅問答

※本文の前に注意書きです。
 今朝になって、ここ数日原稿が上がらん話をして居た。保育園の父母季刊誌が手元に来ました。
 昨日のうちにわたせよなって話は、ちょっとおいといて、自主規制をかけた原稿をとりあえずアップします。
 
 この原稿は、ちょっと熱めに教育論をぶって終いまして、万が一にも編集担当のお母様方に迷惑がかからないとも、限らん。と考えての自主規制ですので、原文のまま(子供の名前だけはチェンジ)で発表させて頂きます。
 一つ断りを入れるならば、私は横書き原則の処を無理体に縦書きで書いており、またそのフォーム、ひな形を変えずに、そのフォームに合わせ読みやすい改行などしており、それがブログに置き換えた事で返って読みにくい事が、予想されます。
 ご勘弁下さいませ。

        
姫・蛙王子 父 かわもともとい
 子供が出来たと知った時一つの夢、願望が芽生えた。「ホーマー」になりたい。知名度が心配だがシンプソンズと云う、米国のバカアニメの主人公で、絵に描いた様なダメ親父で、例えるなら、バカボンのパパである。
 我が家は両親と同居で有り、どちらも厳しく、妻もああ見えて実はキレやすい性格だし、私は影で悪い事ばかり教える。ダメダメな父であろう。そんなん良いわぁって、ポワンと妄想していたのであるが、箱を開けてみると、「何じゃぁ、こりゃぁー!」皆が皆してベタベタ、甘々、何でもオッケー大丈夫。イカン誰かが締めないと…、嗚呼、私しか居ない。
 結果、父母、妻に祖母と四人分を上乗せ、明治生まれの厳格な親父キャラが、思惑に反して産声を上げる。行き過ぎですと叱られる事も在る。匙加減は難しいものです。厳格な父ですから、勢い余って手も出ます。悪い事と決めつけられる事も在りますが、怪我をしてからでは遅いのでは無く、絶対に怪我なんかさせない事が寛容で有ると考えて居ます。
 この程、虐待呼ばわりされ激昂しました。「子供が可愛くないのですか?」可愛いから手が出るのですよ。親から叩いてすら貰えない子供こそが愛情不足。可愛そうな子供です。
と、返したら踵を返しました。実際問題、痛みがわからないと、加減もわからない。最近の子は相手が死ぬまで気づかず殴っちゃう。そんな子には成って欲しくはありませんしね。
 なーんて言ってるとまたお叱りを受けるのです。教育に今のところ答えはありません。
 各家庭が右往左往してそれらしいものを掴んで明日に、我が子に伝える他は無いので、又仮にこれぞ教育の王道、正に答えだ。ってのが有ったとして、全子供をそのやり方で教育されたら、個性も何も無い平坦な人の群れが行列を作り、面白味も、何も無い。
 バカボンのパパの居場所はやっぱり欲しい。
posted by かわもともとい at 09:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 作品紹介(仮置場) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月22日

座る女

 女に初めて気付いたのは大きな仕事が片づき打ち上げと称しての飲み会の晩、朝方まだ暗い頃に不意に目が覚めた私の横で正座する姿が一瞬視界に入った時だと思う。
 その時は飲み会で泥酔していた事もあり、気にも留めずに寝付けたし、そもそも酔っぱらっていただけとも考えられた。
 しかし、それから一年近く経った今でも、毎晩の様に女は其処に座って居る。
 その度に深夜目覚めてしまい、私は女を見つめている。
 女は座って居るだけで何をする訳でもなく座ったままであり、私が見つめている事も気に留めているそぶりもない。
 一度、思い切って話しかけた事もあるが、返答は無かった。毎日必ず私の寝ている横で只々背を向け座り続けて居る。
 現に今も手の届く位の所に座って居るが、女はそのまま動かず微動だにしない。ちょうど寝室のドアの方を向き、服装も上下共白い服を着ている様に見えるのであるが、霧がかっていて正確にはわからない。
 女の存在は現実とも幻覚とも取れるが、時折揺れる毛先だけが女の実体感を浮き彫りにさせられる。
 今日も変わらず女は座り続けて居たが、その毛先がハラッと大きく揺れたかと思うと、首もとにうっすらシワがよりこちらを振り向く様に感じられた。
 私は慌てて布団をかぶり、女から背を向け胎児の様に丸くなった。
 女は立ち上がりこちらに向き直ったと、気配だけながら確実に感じ取れた。
「そこか、隠れても無駄だよ。出てらっしゃい!」
 とても低く冷静な声が部屋に透き通り響き渡った。その直後ラップ音が聞こえ、布団上で女の座って居た反対側で布団の直ぐ上に有る窓ガラスが飛散し派手な音が轟き、震える私を包み込んだ布団ごしに破片が落る感触や振動が生々しく伝わって来る。
 布団を握る力が増し、身体の震えと鼓動も大きく高鳴っていった。
 強く布団を抱え込んでいる為か鮮明に聞き取れないが、女はまだ何事かしゃべっている。時折それに返答する様にラップ音が鳴った。
 何でこんな事に成ってしまったのだろう。
 握りしめた布団の隙間に細く朝日が差し込んで来た。しばらく部屋内は静寂さを取り戻して居る。
 何時間震えたろうか騒がしい夜も明けたらしい、急にホッとしてしまい気が付くと目覚まし時計がけたたましく出勤を知らせて居る、私はいつの間にか寝てしまったらしかった。
 様子を伺いながらそおっと掛け布団をほんの少し見渡せる程度にめくり、隙間からあたりを見回す。「いつもと変わったところはなさそうだ。」安堵の息を漏らし、背筋を伸ばすとパキッと背骨が鳴り、肩も張っている。無理な体勢が長かったせいだろう。
 布団の中でストレッチを繰り返す、疲れは残っているものの緊張はほぐれ冷静さを取り戻せた、ひとまず鳴りっぱなしの寝覚まし時計を止めないと近所迷惑である。
 掛け布団から身を伸ばし枕の先の時計に手を伸ばすと女と眼と眼がピッタリと一致した。女は枕から壁までの人間が入り込める事の無いごく僅かな空間に身を屈め、こちらを向いている。否明らかに見つめている。
 女はスーと壁と同化する様に後ずさり顔全体が見えた。女の顔は大きく湾曲してゆがんでいるにもかかわらず表情だけは伝わり不気味で在った。女は口元に笑みを見せながら壁に消えたが、視線だけは依然在り々々と感じられる。
 私はとっさに時計を掴んで抱え込むと、昨夜と同様に布団にくるまるり身を隠し、手足の震えを悟られまいと縮めた身体を強張らせ時が過ぎるのを待った。
 布団に隙間ができいたが閉ざす事も出来ず、むしろそこから見える光景から目を離せなく成って居た。なぜなら気付いた時には女にのぞき込まれて居たのだ。
 しばらく女は私を観察し揺れ漂い、今は女の足だけが見え、私は震える手足を押さえ込みながら定位置とも云えるいつもの場所まで歩く女を追っている。フッと姿が消えうろたえたが、しばらくするといつも通りに座る女の背中が見えた。
 腰元まで伸びた長い毛が、いつもよりも大きくはためいて居た。
 昨夜割れた筈の窓を後方に、女は背に朝日を存分に受けて次第に消え失せた。
 夢うつつで身を起こすとジャリジャリっとガラスの擦れる音がした。
 窓ガラスが割れたのは、少なくとも夢や幻想の類では無いらしい事はハッキリした。助かったのは部屋の中よりも、外の方が多く破片が飛んでいる事だった。手で拾える破片を除いて掃除機をかければ今晩からでも寝れそうである。もちろん寝かせて貰えればの話なのだが。
 その日は出勤してもどうにも仕事に集中できずに喫煙所でポカンと、輪っかを吐きだしては数えたりして居た。
 私は女が座り始めてからと云うもの仕事の成績は右肩下がり、女のせいで寝不足の日々も続き、仕事に全く気が入らないで居た。その結果、部署替えで課長に昇進も給与は目減りし、実際の所体良く窓際に追いやられたのだ。
 おかげで朝からこのガラス張りで隔離され閉ざされた別世界の様な喫煙所で、たばこを吹かしていても何のおとがめも無く気楽に過ごして居られるのであるが、四方をガラスの壁とベンチに囲まれて、中央に鎮座せしめる空気清浄機兼用の灰皿が、ブンブンと唸る姿は毎日清掃されて居るせいも有り白々く、夜な々々姿を見せる座る女にうっすらと、煙と煙の狭間で印象が重なり、どうにも不気味である。特に今日はいつになくその幻想が濃圧に感じられ心にゆとりを取り戻せずに、たばこと時間ばかりが一本づつ目減りしてゆく。
 ドンと肩を叩かれる様に抱き着かれ度肝を抜かれた。元部下の小林が屈託無い笑顔で話しかけて来る。
「また、係長のおごりでね?」
 酒の催促らしい。ひとまず小林には「今は課長だよ。」などと生返事で返答しておく、そう言えば女が座りだしたあの日の飲み会も小林を連れ何件かハシゴをした。何度も記憶をたぐるも三件目位から記憶が曖昧と言おうか、無い。でもきっとその間に何か原因があって女は座って居るに違いないのだ。そう思えてならない。
 私が記憶を呼び起こし悩んでいる最中も、私の生返事相手に小林はしゃべり続けて居たが、ふと気にかかる事を耳にした様な気がしたので、そちらに気持ちを切り替え、小林に頭から話を戻させ様と話しかけるも、小林は一方的に話しを続けて居る。
 全く軽い男だ。もっともそんな男だから、飲むと無口に成る私とは酒の席で相性が合い、良く連れ回していたのだが、素面では対応に困る。
 止まらない小林の話に半ば呆れながらも、見とれてしまい根本まで燃え尽きたたばこの灰を落とそうと中央の灰皿に向うと女が正座して居る。それもこちらを向いて、しかも今朝よりも鮮明に見えて居る。
 たばこの灰はハラハラと私の膝に落ち指に挟まったままのたばこは葉を燃やしきりフィルターと私の指を焼いている。
 慌てて小林の方に向き直してみるがまだしゃべり続けて居り、女に気付いた様子は無い。合間に見る女はゆがんだ顔でもハッキリとこちらを睨んでいる事がわかるぐらい、こちらを凝視している。何度もその存在を示してみても、小林は女の存在には気付かない。仕舞いには、「じゃぁ、今晩いつもの所でお願いします。」と、勝手におごらせる約束を取り付けて立ち去ってしまった。
 フィルターを焦がし消えたたばこを握りしめ中央の女に向き直ると、女も退室する小林を一瞥し、しばしお互いに見つめ合う。何だか見覚えのある顔だがゆがんでる為かいっこうに思い出せない。
 混沌とした時間が過ぎ喫煙所で在るガラス箱の空気が湿っぽく感じ始めた頃、突然他の社員が談笑しながら入って来た。
 湿った空気が吸い出される様に開けられたドアに向かい流されて行くると、女は消えた。
 今までとは違う事は確かだ。今朝の一件に喫煙所と一線を越え、事態は悪化に向かっているに違いはない。原因がわからない事には手の施しようもないが、私の手元には手懸かり足るカードは一枚もない。「困った。」そんな気持ちを押し殺し帰路に着いた。
 部屋に入って不安を押し殺し、やっとくつろぎかけた頃ふと小林との約束を思い出した。
 あの女の事で頭がいっぱいでうっかりしていた。投げた上着を羽織り直し身仕度を調えていると、ブレーカーでも落ちたのか部屋の照明が一瞬のうちに消えた。
 暗闇の中に立たされて、周囲を見回しても闇がうずまき、元の方向も立っていた場所さえも解らない。
 見回した瞬間に後方で、一瞬だけ一定の角度で一筋の細いとても細い糸が見えた。
 そこに向かい手を出しても糸は掴め無い、どうやらその糸は床から漏れる光の筋らしかった。それを追う様に屈み、覗くと覚えのない節穴から光が漏れている。
 這いつくばり節穴を覗き見ると、厨房らしい場所にカウンターと椅子、見覚えの有る風景らしいのだが解らない。
 翼々考えを巡らし、昔行き着けていた小料理屋で有る事に気付いた。しかし何で自分の部屋の下に在るのか、解らない。
 それにしても普段横から見る風景が上から見ただけで随分と違って見えるものである。もっとも直ぐに思い立たなかった理由はもう一つ、この小料理屋は数ヶ月か前に火事で全焼しているのだ。しかもその火事に私もあの小林も立ち会って居る。
 腕の良い親父さんと娘さんで切り盛りする雰囲気の良い、小さいながらおもむきの在る店だったと記憶している。
 普段は幼さの残る可愛らしい娘さんだったが、一度泥酔した中年男性の客に絡まれ、その客の頭からお冷やをぶちまけ、逆上した所をピシャッと一言「客がお店を選ぶ様に、店だって客を選ぶ権利ってもんが有るんだよ。」男は急に酔いが覚めたか、瞬きする間もなく店を後にした。懐かしい想い出だ。
 それにしても何故、無くなった小料理屋が存在するのか、ましてや私の部屋で覗いているのか、考えを巡らしていて、ふと身体の異変に気付いた。まるで私自身が床と言おうか、天井の一部に成ったかの様に張り付いたまま動けない。仕方なくゆく末を覗き見るしかない様だった。
 カウンターだけの店内に客は私と小林だけの様だ。いつもの様に小林が一人でしゃべり立て合間に私がうんうんとうなずいて居る。当時は良く在った光景だ。
「確かにうちはしがないオフィス用品店ですよ。カタログ配ったって大手には勝てないんだから、OA機器のリースで持ってる様なもんじゃないですか。」
 私はどうやら小林の話はそっちのけで、持ち出した残業分の書類を整理している様だ。
「係長、聞いてます。あの石井商事のリース機器の総入れ替えだって、係長一人でまとめた様なものじゃないですか。」
 私はやはり生返事だ。
「それを課長が自分一人でやった様に話してるとこ見ちゃったんですよ。この前の打ち上げ、アレだって係長だけに残業させて、おかしいでしょ普通。」
 相変わらず相づちだけ打っているが、どうも違和感がある。今の小林の話は確かにおかしい。私はその打ち上げに出ていた筈だ。
 「アレはアレで良かったんだよ。」と、いきりたつ小林を私が制して、たばこに火を付ける。たばこの煙が覗いている私の目に向かって舞い上がる。
 煙でしょぼくれた眼で、階下の顛末を追う。
 私はたばこを指に挟んだまま、小林の話に聞き耳を立てカウンターに書類を広げていた。その時、ポトリと書類の束に火種が落ちた。
 他に客が居ない事を良い事にカウンターの半分以上まで広げていた書類が、一斉に炎に取って代わる。火種を落とした当の本人が茫然と眺める中、瞬く間に炎がカウンターに燃え移る。燃えさかる炎が厨房のガスボンベに引火するまでは、あっという間だった。
 ボンベの爆風が店内の四人を双方に吹き飛ばす。
 小林は運悪く店の奥に吹き飛ばされ、椅子やカウンターの下敷きになり懸命に助けを求めている。
 親父さんはボンベからの熱風をまともに受け黒い塊の様に成り果てていながらも、娘をかばおうと炎と残骸の盾に成る様に娘に被い被さっている。
 私は、私はどこに居るのだ。店中隈無く眼を走らせると、私はカウンターの下で倒れており、たいした外傷も見られず炎に包まれた店内を未だ茫然と眺めて居た。
 覗き見している私にも火の粉が飛び、狂い舞う炎の凄まじさが伝わって来る。
 階下の私は自分に火が燃え移った事も気付かぬ程惚けて折り、そのまま燃え死ぬのではないかと思えたが、我に返り燃え移った炎を払い店の奥で死に物狂いの小林に気付くと、動揺し後ずさり逃げだそうとしている。
 結局私は小林を見捨て、入り口近くに飛ばされていた娘さんを親父さんから引き離し、店外へ転げ出て行った。
 私は異常な程に感極まり涙がボトボトと落ちてゆくも、目前では炎の渦は増すばかりで既に息絶えたろう小林と親父さんが、踊る様に焼け焦げて仕舞う一部始終を見守った。
 視界全体が真っ赤に染まり、だいぶ経った頃放水が始まり火は沈下していった、そっと手に力を入れて見ると指先が反応する。思い切って身体を起こすと、いつも通りの部屋に戻っていた。
 今の出来事が飲み込めないで居る私は、気を落ち着かせようと自然と胸ポケットへ手を伸ばしたばこを取り出していたが、その箱を握りつぶした。
 落ち着きと同時に、様々な出来事が鮮明に頭を巡り思い出されていった。
 そう、今見た光景も実際に起きた事実だ。私が会社で追いやられた切欠も、居ない筈の小林との会話をいぶかしく思った会社側の判断だ。
 小林はもう居ない、夢から覚めた様な感覚だった。
 今日の約束を思い出す。何だか居ても経っても折れず、着の身着のままで焼けた小料理店跡に私は向かう事にした。きっと小林はあの店で待っている筈だ。
 店は会社の側で在る為、電車に幾らか揺られて行く事になるのだが、錯覚かもしれないがあの女がどうも着いてまわって居る様なのだ。つり革に捕まった私をうっすらと映し出す夜景の窓、乗り換えで不意に振り向いた瞬間、目的の駅に近づくにつれそれは確信へと変わった。それもどうやら着いて来てるのでは無く、私は追われて居る様だ。
 改札を抜けると店に向かい私は走り出した。
 大勢の人々が帰路につく為に駅へ向かう中、私だけが逆方向に駆けている。振り返ると女も流れに逆らい静止画を拡大する様にこちらに迫り、揺らぐ顔と白い布がくっきりと眼に映る、行き交う人々と肩をぶつけながらも懸命に走った。
 周りに人影も無くなり店が目前に迫った頃、足首を掴まれ転倒した。
 倒れた時に打ち付けた額から血が滲む、呻いているとあのゆがんだ顔が地面から見上げて居た。
 跳ね起き駆け出そうとしたが、足が絡まり路上で潰れる様にまたしても倒れ込んでしまった。店まで後もうわずか、這いつくばって進むのだが一向に前に進まず足が重い、見れば両足をしっかりと女に抱え込まれて、引き摺っている。
 前に向き直し全力で這う、店の焼け跡は整地されていた筈だが鎮火後そのままの光景が目前に広がって、その奥からは聞き慣れた心地の良い声が木霊している。一層力んで前進すると私を助け出すかの様に、一本の腕が差し出されて来た。
 焼け跡から差し出された腕は黒く煤け、所々焼けた皮膚がぬめり落ち赤い血肉が覗いていた。あと僅かで黒い腕に届く頃、足先からしがみついた女は肩まで上がり鬼の形相で突き出た腕を払い飛ばした。
 腕は腐敗した肉を吹き飛ばしながら店先に転がった。朽ちた腕からは骨らしい物が突き出し原型を留めていない、私は女を背負ったまま肘を突き立てそこに向かい懸命に進もうとするが全く動けない。
 肉片が蠢き懐かしい顔をかたどっていく、肉片は悲しげな面持ちの小林の顔となって留まった。
 肉片は目を見開き、口を開いた。
「その人は僕と行くだから、邪魔をしないでよ。」
 背中が急に軽くなったと思った途端、小林の顔を女がまた跳ね飛ばした。しかし叩き付けられた壁にへばり付いた肉片は再び小林の顔を整形していく。
 女が離れ身体が自由になり立ち上がろうとすると、急に身体が軽く感じた。女が離れた為だけではない、身体が気体の様に軽く空に浮き上がる。とても開放的で晴れやかな心持ちで有った。何もかも忘れ、導かれようとしていたその時、背後からあの女の声が聞こえた。
「あんたもしつこいね。客が店を選ぶ様に、店だって客を選ぶ権利ってもんが有るんだよ。」
 聞き覚えのある台詞、それが何だったかを思い起こす間も無く女はたたみ掛ける。
「私の店から出て行きな。」
 そう言うが早いか、小林に向かい一握りの塩がまかれ、小林は悲痛な表情で腐敗し皮膚が剥げ落ち肉も泡の様に溶け、跡形もなく消え去った。
 我に返ると、あの小料理屋の娘さんがひざまずき倒れ込んで居た。
 彼女は意識不明のまま入院中と聞いていたのだが、今ここで私を全力で守ってくれたのは彼女だったのだ。
 タクシーを呼び病院まで彼女を戻しに行くと、病院側に随分と怪しまれたが何とかベットまで運び込めた。
 横に腰掛け彼女の寝顔を見つめながら、小料理屋跡での惨劇を、今朝の出来事を、またあの私の引き起こした災いを、考えに浸る。
 あの座る女は彼女の生き霊だったのではなかろうか。
 小林は私が殺したも同然、そんな小林に取り憑かれた私を毎晩座り守ってくれ、最後には身を挺して助けてくれたのだろう。そう考えると、また涙が止めどなく溢れた。彼女の父親も私が殺しているのだ。それなのに、彼女はずっと一年もの間私を守ってくれて居たのだ。
 私はひとしきり涙を流し、大きく頭を下げると病室を後にした。
 朝も近い深夜、病院の廊下は寒々として普段なら臆していたかもしれないが、今は平常心とは言えないまでも平然と歩けた。
 エレベーターに向かう曲がり角の窓に、私が移り込んでいる。死者に取り憑かれると痩せ細り終いに死んでしまう話は昔から有るが、こうまじまじと自分の顔を見直すとこの一年で見る影もなく痩けて仕舞っている。
 あの娘さんが居なかったら今日、私は小林に連れられて死んでいたのだと、改めて実感が沸いた時私の背後がゆがんみ抱きつかれた。
 窓の中の私はゆがんだ顔の女に抱きつかれ、実際の自分を何度見ても誰の手も回っていないのであるが、全く身動きが取れずもがき呻く以外何も出来ない。
 そこに耳元でささやかれたのだ。「今日は何の日。」何の事か一向にわからいが答えようにも喉からは空気が漏れる音しか出ず、どうする事も出来ない状態で、そのまま窓に吸い込まれ私は外に放り出された。
 街の明かりが空の星を模してる様で美しい、風が舞い上がり私を包む。
 身体が舞い空に引き込まれて行く感覚を感じるも、私の身体は逆に落下しているのがわかる。
 遠くで救急車のサイレンが聞こえ、遠くで街のざわめきが聞こえる。そんな音に混ざり合う様に女の声が私に死の宣告をしてくる。
「今日はお父さんの命日なの。」
posted by かわもともとい at 20:20| Comment(2) | 作品紹介(仮置場) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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